東京農業大学世田谷キャンパスは、小田急線経堂駅と東急田園都市線用賀駅のほぼ中間地点にあります。都心にあるにも関わらず、大学の校風同様のどかな場所で、初夏には学内の田んぼからカエルの大合唱が聞こえてくるようなところ。毎年行われる「収穫祭」は、学生たちが育てた野菜やお米の販売会に長蛇の列ができるほど人気があります。
大学向かいには、今度の東京オリンピックで馬術競技が行われる馬事公苑があり、少しずつ街も変化を遂げています。
今回はそんな東京農大を中心におさんぽしてみました。
今回のおさんぽルート
経堂駅→①農大通り商店街→②東京農業大学(農大アカデミアセンター・カフェテリア グリーン)→③東京農業大学「食と農」の博物館→経堂駅
行程:3.6km
歩数:5,000歩
所要時間:40分+見学、ランチ
予算:2000円
降り立つと、駅を真ん中にして京王線桜上水駅の方向へ伸びている「すずらん通り商店街」と、東京農大に向かって伸びる「農大通り商店街」があります。
「すずらん通り商店街」には良質の文房具や雑貨があることで有名な「ハルカゼ舎」や、その場で焙煎してくれるコーヒー豆ショップ「焙煎珈房セレクト」などがあって楽しいので、時間があったらそちらもまわってみてくださいね。
今回は「農大通り商店街」を通って東京農大を目指します!
1 活気ある商店街はどんな年代の人でも楽しめる
農大通り商店街にはここ1年ほどで、タピオカのお店が3店舗もオープンしました。大学の他に、近隣の高校生など若者が多いので、いつも賑わっています。
ちょっとだけ食べ歩きのお店も紹介しますと、この商店街で食べてほしいのは2つ。ひとつめは無添加と手作りをモットーにしている「ナチュラルクレープ」というクレープ屋さん。
そしてもう一軒は、このナチュラルクレープの系列店のたい焼き屋さん「SAKURI」です。
この「SAKURI」の手前の角を右に曲がると、「ダズンフォー」というパン屋さんがあります。小さなイートインカウンターがあってパンを食べることができるのですが、冬季以外はなめらかなジェラートもいただくことができるんですよ。取材時はまだジェラート販売を再開していなかったので、やっていたらこちらもぜひ食べてみてくださいね。
さて、ここまできたら商店街のおわりです。ラーメン激戦区なだけあって、ラーメン屋さんも左右にさまざまあったり、ちょっと高級なお寿司屋さんやイタリアン、ちいさなビストロなど、どんな方でも楽しめるような商店街です。
左側に見える新しい校舎は、昨年新設した東京農業大学併設の稲花小学校。ここのカリキュラムは、さすが東京農大に併設されているとあって一風変わっています。農業や食文化、科学技術などを実体験として学ぶために、「稲花タイム」という実習授業に富んでいるんです。こうした取り組みが、日本の農を支えているのかもしれませんね。
2 学内を歩くだけで考えさせられる大学
東京農業大学の経堂門に到着です。門をくぐると、右側には桜の木が、左側には枝垂れ桜の木があり、開花時期になると美しい桜並木になります。せっかくなら桜の季節に合わせておさんぽしてみてくださいね。
さて、最初に向かったのは、経堂門を入って左手にある「農大アカデミアセンター」。1階には自由に見学ができる展示スペース「実学の杜」があり、東京農大設立からの歴史を知ることができます。
東京農大では、一般向けの講座も充実していて、この4月には世田谷代田にオープンカレッジ専用の施設がオープンします。発酵食品やワイン、チーズのことなど、大人も子どもも楽しめる内容で充実しているので、調べてみてくださいね。
農大アカデミアセンターを出て、18号館の前にある百周年記念講堂には、一階に学食が2店舗入っています。今日は生協が運営している「カフェテリア グリーン」にお邪魔しました。
学食は一般の方も利用可能ですが、学生が集中するお昼の時間帯はなるべく避けて、邪魔にならないよう利用しましょう。
「カフェテリア グリーン」は、小分けにされたお惣菜を自由に取っていくスタイルの学食です。
特筆すべきはこの「カフェテリア グリーン」で行なっているフードロス対策です。長期休暇中はランチタイムが終わったあと14時ごろから、通常時は営業終了の一時間前(19時)から、残ってしまったお惣菜をフードパックに入れて販売しているんです。
直接来ても、余っていれば購入できますが、「tabete」というアプリを入れれば、アプリ上でお惣菜の購入・決済することができます。20時までこんなに野菜たっぷりのブッフェが楽しめる上に、お惣菜のテイクアウトもできるなんて嬉しいサービスですよね。
このサービスを導入したのは、東京農大でフードロスの研究をしている准教授からのアドバイスもあったとか。こうした取り組みがもっと増えていけば、と思うようなことを取り入れているのは、さすが農業や環境問題を扱っている東京農大です。
東京農業大学
東京都世田谷区桜丘1-1-1
カフェテリア グリーン
営業時間 10:00~20:00 長期休暇中は14:00閉店
定休日 土日祝
https://www.nodai.ac.jp/
そして出るときは馬事公苑の方向に出られる「正門」から出ると、正面が馬事公苑に続く「けやき広場」です。
週末は子どもたちが遊んでいて賑やか。
広場が見えるスターバックスは窓が大きくてテラス席があり、開放感いっぱいです。
3 生き物や自然にゆっくり触れ合える穴場な博物館
スターバックスとけやき広場の間の道を進むと見えてくるのが、東京農業大学が運営している「食と農」の博物館。目印になるのは、表にいる大きなシャモのオブジェ。東南アジアでは縁起がよく、願掛けをする鶏として有名なのだそう。
外には二種類の鶏がいますが、どちらも天然記念物。地域の方々に見守られながら大事に育てられています。
博物館内はさまざまなコーナーがあり、どれも楽しいのですが、全部をお見せしてしまうと行く楽しみがなくなってしまうので、どうしても、というところだけご紹介します。
はじめにお伝えしたいのは、このコマーシャルボックスのこと。1階中央にあるこの棚は、ひとつひとつが企業の広告になっていて、実はこの広告収入で博物館の運営の一部が成り立っている、大切な場所なのです。
こちらに並んでいる企業のほとんどは、農大の卒業生が就職した先。そのご縁があって、こうして博物館運営につながっているんです。
よく見るとおもしろいものがいっぱい。右側は、お米メーカーさんのボックス。チャーハンやカレーなど用途に合わせて作ったお米があるんですよ。
収穫祭のときや週末などはさまざまな企業や生産者が集い、販売会も催しています。
それからこちらは二階の銘酒紹介のコーナー。なんと日本にある日本酒蔵元のおよそ5割は農大出身者が営んでいるのです。農大生が日本のお酒の文化を担っていたなんて、知っていましたか?
こちらはお酒にまつわる品々を展示しているスペース。左は、ウグイス徳利と名付けられたもので、お酒を注ぐとウグイスの鳴き声がするという美しい品。右は盃ですが、底が尖っていて置けないようになっています。つまり、盃を置かずに飲み続けろ、ということですね。
まだまだ魅力的なところがたくさんあるのですが、隣の建物「バイオリウム」に移りましょう。
こちらのバイオリウムには、進化生物学研究所が研究用に所蔵する、熱帯の珍しい動植物が展示されているんです。特にマダガスカルの乾燥地帯の植物が多く、大きなバオバブの木をはじめ、多肉植物やトゲトゲのサボテンなど、めずらしいものもいっぱい。
まず、子どもたちに人気があるこちらのカメさんから。ケヅメリクガメという種類で、後股の近くに鋭いツメのような突起があることが由来なんだそう。葉っぱが大好きで大食いとのことで、キャベツをバリバリ食べている姿を見られる時間もあります。ときどき運動が必要なので、温室内の遊歩道やけやき広場を散歩していることもあるんですよ。
そしてこちらはクロレムール。マダガスカル固有の原始的なサルです。他にもワオレムールなど50頭近くが飼育されています。
おもしろいのは動物だけではありません。見たことがない植物もたくさんあるんです。
バイオリウムでは毎週火・木の14時と15時に、進化生物学研究所の研究員が案内するガイドツアーを実施しています(所要時間40〜50分程度/大人500円・子ども250円)。事前に相談すると、それ以外の日程でも対応してもらうことができます。研究員からひとつひとつ説明を受けると、ふらりと散策するよりぐっと知識が広がるので、おすすめですよ。
東京農業大学「食と農」の博物館
東京都世田谷区上用賀2-4-28
03-5477-4033
営業時間 10:00~17:00 12〜3月は16:30まで
休館日 月曜・月曜が祝日の場合は火曜・毎月最終火曜日・大学が定めた休日https://www.nodai.ac.jp/campus/facilities/syokutonou/
ガイドツアー問い合わせ先
(一財)進化生物学研究所 03-3420-7449/03-3425-2554
ここから世田谷通りに出ると、渋谷行きや用賀行きのバスに乗ることができます。もう一度経堂駅まで戻ってもいいし、バスでまたお出かけに向かっても。
楽しくて勉強にもなるおさんぽ、桜の季節にぜひ行ってみてくださいね。